ポール・オースター『サンセット・パーク』
日本で愛読していたポール・オースター。
フランスに来てからは一回も読んでない。
いや、大学に申し込んで最初に買った仏語の本が確かポール・オースターの『幽霊たち』だったかな?
それが最初で最後のフランスでのオースター。本棚のどこかに今でも確かあるはずだけど。
で、ふと図書館でオースターの最新作の仏語版『サンセット・パーク』を見かけて、ついつい借りてきたらはまった・・
そして、なぜ大学卒業前後にあんなにオースターにはまっていたのかを思い出した。
村上春樹と人生への哀しみ感がとても似ているのだ!!
若い頃、船の乗組員として働きながらフランスまで来た、というようなことを昔読んだことがあるけど、オースターはアメリカ人なんだがとてもヨーロピアン。
スタイリッシュで簡潔な文体は英語ならではの美しさ。。
フランス人前衛アーチストのソフィ・カルとも仲良しでで、『リヴァイアサン』のゲージュツ化マリア・ターナーも彼女をモデルにしたとかで、アートへの造詣も深そうな作家である。
聞いたこともなかった本だったけど、装丁がよかったし、とりあえず深く考えずに借りてみたら大ヒット!
主人公マイルズの若くしての人生への喪失感。
歳とっても感じない人は感じないであろう、どこから来るのかわからないほどのこの物悲しさ、寂しさ、そして人生への諦感。
村上春樹作品にも一貫してあるテーマのひとつが、オースターの近年の作品にもこんなにもありありと流れていて単にびっくりした。
こういうのは日本的な情緒だと思い込んでいたら、国籍を超えて存在しうる共通のテーマだったんだ、と。
読書って癖になると当たり前に、水をガブガブ飲むように幾らでも読めるんだが、一旦離れると、なくても生きていけるのでついつい遠ざかってしまって、こんな普遍的な感覚もすっかり忘れそうになっていた。
そういえば最近の本でもないし、あまり好きな本でもないが、フランスでもかなり訳されている村上春樹の一冊、『ノルウェーの森』の仏語タイトルが『不可能な散歩』(Le Ballade de l’impossible)と訳されていて、その言葉の組み合わせ具合がちょっと不思議でずっと気になっていた。
ちょっと違うんだが、でも確かにそこにある微妙な現実からの浮遊感というか現実感のなさ具合は汲み取られている。
そしてそんな浮遊感が、読んでいる『サンセットパーク』の世界と酷似しているなーと。
『ノルウェイの森』(1987年)
村上春樹
類は友を呼ぶというか、ポール・オースターの訳者・柴田元幸は村上春樹との共著もあるし、オースターと村上春樹も確か知り合いのような・・村上春樹がオースター好き!と言ってるのはどっかで読んだ。
サンセットはまだ和訳されてない、とのことだが、早くされてほしい一冊だ。
最後まで不幸すぎて笑えんが・・ネタは明かしまへん。。