アニエスベー写真展『VIVRE!!』

アニエスベー写真展『VIVRE!!』

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十二月に入って、二ヶ月来気になっていたアニエスベーギャラリー主催の移民写真展『ビーブル!!』(VIVRE)にようやく行ってきた。

展覧会好きなお友達と久しぶりに会う口実にもなって子連れにはなかなかできん久々の文化お出かけである 
ポスターに使われているロベール・ドワノーのモノクロの写真も美しい。

アニエスベー写真展『VIVRE!!』

アニエスベー写真展『VIVRE!!』

Malik Sidibe, Nuit de noel_1965

Malik Sidibe, Nuit de noel_1965_Courtesy Collection agnes b.

フランス語を始める前は、VIVREといえばファッションビルのビブレのことだと思っていたが、宮崎駿の感動映画『風立ちぬ』の中でも主人公が何度も呟いていた、ポール・ヴァレリー様の詩『海辺の墓地』の一節「Le vent se lève, il faut tenter de vivre」(「風立ちぬ、いざ生きめやも」訳・堀辰雄)の方のビーブル(生きる)である。

『風立ちぬ』宮崎駿 監督

『風立ちぬ』宮崎駿 監督

正しい発音に即した表記では、ヴィーヴルと書くところなのだろうが、ウに点々が付くのが二回続くのはうざい。

そしてこれがなかなか良かった。どころか涙出そうになった。

写真展はアニエスベー主催の部分と歴史館主催のスペースが分かれていて、アニエスベーの方はどこまでもオシャレなフォトギャラリー風、こっちの作品もピリ辛の現代社会批判的ユーモアがあちこちに見られてなかなか。

このアニエスベー写真展に入る手前にある展示の方はまさに『ザ・移民ストーリー』。
たくさんの移民アーチスト(フランスの人口はほとんど元移民な気がするが・・)のブラックなユーモアテンコ盛りの現代的作品の横に、五十年前に移民した人たちの思い出の品や写真が並び、これがじっくり見てると結構すごかった。

六段ベッド

六段ベッド

移民ソングプレイヤー

移民ソングプレイヤー

お洒落な写真展にはない本音の力強さっていうか。
でもすごいユーモアもいっぱい。

ベトナムから移民した女性の手記には、「ある日お婆ちゃんと市場で買い物していたら、お母さんが血相変えて呼びに来て、フランスに向かう船が見つかったからすぐ来なさいって。急かされてお婆ちゃんに挨拶する暇もなかったのが悲しかった・・」みたいなことが書いてある。

次にいつ会えるのか、もしかしたらもう生涯会えないのかもわからないけど、とにかく家族の未来を託して移民を決意したのだからチャンスは逃せない。。
でもきっと婆ちゃんは年を取り過ぎていて今更新しい外国の環境に行って適応するなんて無理だし、船のチケット代も底をついたので一緒に行けなかったのだろう。

今まで身近で一緒に暮らしてきたのに、ある日突然、逃げるようにさよならを言う時間さえなく行かなくてはならない・・なんて。厳しい選択である。
でもよりよい未来を信じてほんの少しのチャンスに賭ける方が、苦しい生活や戦争の中で希望もなく生きていくよりマシなのだ。

だから770万人(2014年1月1日付調べ)もの人がフランスに移民している・・これは人口の11%以上に当たるらしい。

もちろん近年は私のように、自国にとてつもない政治的・経済的理由がない国(この基準は人によって意見が分かれるところだと思うけれど、少なくとも今の日本は戦時下ではない)からの移民もたくさんいるので、この数字に含まれる全員がとても深く辛い理由で移民したわけではないと思うが。
それでも国を変えるというのはある程度覚悟がいることでもあって。
でもそんなこと言ってて単に一つのシステムから逃げてるだけ、という人もあって。

あるんです、こっちで長年住んでても、「○○ちゃんはいいわよねー、こっちで問題なく適応しててもう日本に帰る必要もないんでしょー。でも私らはちゃんとした日本人だから、いつか日本に帰るんだー!当たり前じゃんそんなの」というような、ちっちゃいイヂワル言われたことが。

でもちゃんとした日本人だから日本に帰ると言ってたこの人たちは、今こっちでレストラン開いてます。
ということは、あの人たちももうちゃんとした日本人じゃなくなったんですかねー?・・?

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Exposition『VIVRE!!』
2016年10月18日(火)〜2017年1月8日(日)まで国立移民歴史館

MUSÉE DE L’HISTOIRE DE L’IMMIGRATION – PALAIS DE LA PORTE DORÉE
293, avenue Daumesnil
75012 Paris
TEL : 01 53 59 58 60

地下鉄 : Porte Dorée (8番線)
トラムウェイ : T3番線

開館時間:火曜~金曜、10時~17時半(チケット販売は16時45分まで)
土・日曜、10時~19時(チケット販売は18時15分まで)
閉館日:毎週月曜、1月1日、5月1日、12月25日。
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