ウォーカー・エヴァンス『アラバマの農民』(1936)

ウォーカー・エヴァンス写真展 @ ポンピドゥー・センター

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木曜から始まったウォーカー・エヴァンスの写真展に行ってきた。

ポンピドゥー・センターの展示会に行くのは久しぶり。

前夜にお出かけ計画を小耳に挟んだチビ太は、「あボクは学校あるから行けないから金曜はダメー」と口を挟んできたが、もともとこういう写真展に連れて行くつもりがないから学校行ってる日に行こうと計画してたので無視・・

 

ウォーカー・エヴァンス (1903-1975) は20世紀に活躍した最も重要なアメリカ人フォトグラフォーのひとりと言われている。

1930年台の世界恐慌の中のアメリカの姿をありのままに実写し、1940年~50年代に『フォーチュン』誌に掲載された一連の写真とドキュメンタリースタイルは後世のアーチストに多大な影響を与えた。

「黒人の教会」や「シカゴの木造住宅」等の地域の建物、通勤する人々のポートレート、地下鉄の乗客、路上のゴミ、路上の広告看板、シアターのネオンサイン、ハバナの労働者、ハサミ等のオブジェ、アラバマの農民一家、等々の「日常のごく普通のものと人」が彼のテーマ。

その作品の中で最も有名なのは、アラバマの農民一家を撮影したシリーズだろう。

ウォーカー・エヴァンス『アラバマ州の小作人の妻』(1936)

© Walker Evans

ウォーカー・エヴァンス『アラバマの農民』(1936)

© Walker Evans Archive, The Metropolitan Museum of Art © Fernando Maquieira, Cromotex

世界恐慌下、農村の惨状とその復興の記録を目的としたアメリカ農業安定局(Farm Security Administration)の「FSAプロジェクト」に参加し、南部の農村でドキュメント写真を撮影した時の作品連。

今回のポンピドゥーでの写真展では、このとき撮影されたアラバマ州の小作人の妻、アリー・マエ・ボローの録音インタビューも公開されている。

このFSAプロジェクトには、あの超有名な『移民の母』(Migrant Mother)を撮影したドロテア・ラングも参加している。

ドロテア・ラング『移民の母』(1936)

この写真には移民という題がついているので、私はてっきり外国から移民してきた家族の写真だと思い込んでいたのだが、当時32歳のこの女性はアメリカン・インディアンの血統チェロキーの子孫で正真正銘のアメリカ人。
オクラホマ州で生まれた後、結婚してカリフォルニア州に移り、旦那の逝去や諸々の経由を経て七人の子供を抱え日雇いの仕事を求めて流れ歩いており、あまりの貧困にラングの撮影直前にも車のタイヤを売ってきたところだったという。

国内移民が大量発生していた大恐慌の時代。

モノクロ写真の美しさに気をとられて、その背景にある極貧生活の厳しさが語られることは少ないが、この写真展で時間を過ごすことで、被写体となった人々の表情に滲む苦悩の深さに気づかされた気がした。

エヴァンスの大規模な回顧展が行われるのはフランスでは初めてのことである。

ちょっと不思議なのは、二ヶ月ほど前にこの写真展があるという告知を見て、メモっておいたタイトルは『あの時代のあのアメリカ』というタイトルだったのだが、開催されてみればフォトグラファーの名前だけになっていた。

「あの」が良くて気になった写真展だったので、タイトルが変更されてたのは個人的にはちょっと残念。

ともあれ、歴史の一片が理解できる展覧会に出会えてよかった。

それに展示インスタレーションもいい。
シマシマの柱廊を要所に配し、まるで壁の向こうのビジターは合わせ鏡の中を歩いているような、だまし絵っぽい視覚的トリックがある展示手法には感心した。

広告コレクターとして古いコカコーラの錆びついた路上広告や昔の劇場ポスターなんかを一杯家に飾っていたり、自身で絵を描いたり、雑誌に原稿寄稿したりと意外と遊び心のある幅の広い人だったようなところにも好感が持てる。

ウォーカー・エヴァンス『トラックとネオンサイン』(1930)

© Walker Evans

それもそのはずで、パリのソルボンヌでフランス語を一年学んでいたことがあり、大学卒業当時は作家を目指していた文学青年だったらしい。

写真の芸術性の追求よりも「忠実に記録すること」に力を注いだ彼の作品は、理想の構図を得るために役者を雇って撮影する写真家とは全く異なるアプローチ。

あのドワノーの『市庁舎前のキス』の登場人物も実は役者さんだけど、構図の美しさで歴史に残る写真だってあってもいい。

でも単純な記録という、レコーダーとしての写真、そしてそれが伝えるメッセージの力強さ。

そういうシンプルな原点に立ち戻った写真をみるのは気持ちいい。

特にこんだけモードなお写真が溢れている世界では・・

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写真展『Walker Evans』

2017年4月26日(水)〜2017年8月14日(月)までポンピドゥー・センター

CENTRE POMPIDOU (Niveau 6 – Galerie 2)
Place Georges-Pompidou
75004 Paris
TEL : 01 44 78 12 33
Website : centrepompidou.fr

地下鉄 : Rambuteau(11番線) / Hôtel de Ville(1&11番線 )/ Châtelet(1、4、7、11、14番線 )
RER : Châtelet / Les Halles(A、B、D線 )

 

開館時間:月曜&水~日曜、11時~21時(チケット販売は20時まで)
木曜、11時~23時(チケット販売は22時まで)
閉館日:毎週火曜、5月1日。
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